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by akihirock69
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銀杏BOYZ インタヴュー

――本当に長い間レコーディングしてたけど、トータルしてどれくらいやってたの?

安孫子 一年半ですね。やっと1stアルバムが出来てホント嬉しいっすよ。やるべきことを全部やれたし、何かミラクル起きてる気がしますよね(笑)。

――チンくんは銀杏に参加してもうどれくらい?

チン中村 二年くらいですね、正式に加入したのは一年半前だけど。最初は誘われるとは思ってなくて、凄い光栄なことだったんですよ、好きだったし。自分でやってたこともあったから迷いもありましたけど、いろいろわかった上で誘ってくれてたから、じゃあ行くとこまで行きましょうと。

――他のメンバーはチンくんの何に惹かれたの?

峯田 (即答で)見た目ですね。

村井 (笑)顔の表情とか、背もいい感じだしね。

峯田 ギターを持った感じとかね。何か変なギター弾くんすよ、上手いか下手かわかんない。で、ライヴがとにかく凄いんすよ。普段こんな人がライヴが始まるととんでもない踊りして、前に対バンやってた頃からこの人はホント凄いなと思ってたの。それで前のバンド解散した時に「ギターどうしようね?」ってなった時にチンくん呼ぼうと。

安孫子 チンくんの名前しか出なかったですね。

チン ありがたい話ですよ、ギターなんていっぱいいる中でそう言ってくれるのは。

――そうだよね。最初からノリには付いていけた?

チン 全然付いてけないっすよ! 山形弁ウザいっす!! でも最近うつってきちゃって。英語勉強してる人みたいな感じで。エセ山形人ですね(笑)。

――ははは。実際、全ての作業を終えたわけだけど。

村井 やっと自由の身になれました(笑)。最近録り終わったやつ聴いて、浸れる部分もあれば、凄いグッタリしてしまいますね。何かこう「はぁ~」ってなるようなね。頭ん中がグチャグチャと掻き回される感じで。言ってみればセックス終わった後のあのグッタリ感に近いかもしんない。

峯田 バカかお前! まあ長いからね、時間も。

――でも「グッタリする」っていうのはわかるなあ。とにかく過剰なエネルギーが渦巻いてる作品だから。

峯田 うん。ホントに僕らが主語でハッキリとあって、僕らの思い通りにやりたいようにただ詰め込んで……そういう凝り固まった作品ですけど、それを聴いてくれる人がいるっていうのは救いですよね。やっぱり「混沌」だと思うんですよ。それっていうのは生活が混沌としてるからで、その混沌の中に現実には味わえないような光景だったり瞬間だったりがあったりして、それを感じてもらえたら凄く嬉しいです。ウルサいですよ、ギャーギャーピーピー言ってるし。でも、そん中で上手くバランスを取ろうとしてますよね、結果的に聴いてみると。

――なるほど。例えば表現って「自分の中にある何か」を自分のスタイルに変換して出すけど、銀杏はもうスタイル云々じゃなく「自分の中にある何か」をそのまま放出していて。それがこの作品の混沌と生々しさの一因なんじゃないかと思うんだけど。

峯田 そうですね。今は情報がたくさんあって、そん中で自分たちの音楽はこれですって提示するのは凄く難しくなってきてると思うんすよ、評論するわけじゃないけど。そん中でハッキリ何が言いたいかわかんないけど、とりあえず自分たちの中から出てきたものは全部出しましょうっつって。で、聴いてる方も苦しんでるかもしんないけど僕らやってる方も苦しんでますよっつって。で、何かモノがたくさんありすぎて何から手をつけたらいいかわかんない、見たいものがたくさんあり過ぎて何も見たくなくなったみたいな。でもそういう時代だからこそ……。

――自分の中にある何かを信じるしかないと?

峯田 うん。僕ら自身も苦しんでるから答えは出せないけど、ハッキリ自分はこれが好きだこれが嫌いだって分けられるようになると、やりたいことも見えてくる気がしますけどね。やってる本人も苦しんでるからなあ、上手く言えないんだけど。とりあえず今回はドバっと出して、それで次に行けるし。

――うんうん。ライヴ見てても思うんだけど、バンド自体はどんどん「中学生化」していってますよね。

チン ハハハ。何ものにも縛られないっす!

村井 それは嬉しいっすね。二十六とか七にもなって中学生みたいって言われるのは本望です。普通は凄い考えるじゃないですか? 何かを始める前からもう結果を考えたり。でも僕らがやりたいのは考えて何か作ってくよりは、そん時感じてドキドキしたこととか、そういう気持ちを前に出したかったんで。

――それっていうのは前のバンドが解散して一度リセットされたから出来ていることなのかな?

峯田 まあ前のバンドとたまたまメンバーが同じだったってだけで、バラバラの人間が集まったって感じなんですよね。前のバンドの曲もやってるんだけど、本当に時間かかりましたよね、ここまでになるには。こんなことあんまり言いたくないけど、何か、物凄い裏切りとね、握手と、涙がありますよ、この作品の中には。そういうのは出してないけど、作ってる方にはありますよ。もう何回ケンカしたか。

――確かに前のバンドの曲もやってるけど、銀杏BOYZとして録り直したものはどれもよりロマンチックになってるし、解散後に書かれた曲は総じて今までよりグロくなってますよね。

峯田 あぁ、嬉しいっす。たぶんそれは作ってから時間が経って、深みっていうか、もうちょっと引き出せるんじゃないかって。

――曲の気持ちがわかるようになったというか。

峯田 そうそう。でも、結局何が正しいとか無いと思ってるから。特に音楽では。ただ自分たちが好きなことを自信持ってやれればいいと思ってるから。

――その好きなことに対する自信っていうのはどんどんしっかり持てるようになってきてるの?

峯田 あのね、自信はないんすよ。でも、自分の中から自然に出てくるメロディとか曲の雰囲気とか、それをわざわざ止めるのって物凄い残酷なことじゃないですか? 出してあげないとかわいそう、せっかく出てきたものに対してさ。日頃から二十四時間自分は音楽家であると自覚して生活して、いつ出てきてもそれを頭ん中で繰り返して覚えてバンドでやろうってのは心掛けてますけどね。

――なるほど。アルバムを聴かせてもらった思ったのは、バンドがより「大きなもの」に向かっていってるんじゃないかってことで。

峯田 結局、GOING STEADYの時のテーマ性と今は何も変わんないと思うんですよ。GOING STEADYのいちばん最初のシングルが「YOU&I」で、<君と僕>ってことで、結局これなんすよ。でも、何が変わったかっつーと、例えばね、ここにいるチンくんが僕の好きな人だったとする。結局ね、この世界さえ守られていればいいんすよ。「僕がいて君がいて、この空間が全てなんだ!」ってところから始まってると思う、どういう音楽を伝えたいかっていうところで。で、銀杏BOYZになってから改めて自覚したのは、外から来るわけですよ、この二人の環境を切り裂くようなものが。テロだったり、どっかから物凄いイケメンが来たり。そこに対して「やめろー!!」っていう。

――あぁ、要するに二人の世界ではもう完結しなくなっちゃったんだ。

峯田 そうですね。「爆弾飛んで来たらどうすっかなあ」みたいなね。だから改めて歌詞とか見てもそうだし、ギターの音ひとつにしてもそうだけど、物凄く高圧的なところありますよね。「ガーン!」っていう。それは録り方にも僕らこだわったんですけど、意識的なところでもそういう音じゃないと満足出来ないというか。そこまで切羽詰ってると。こんな音してたらあの娘は援助交際しちゃうよみたいな。あの娘が援助交際しないように食い止めるには、こんぐらいのドラムが必要なんだよみたいな。何か、そういうところですよね。「お前そんなドラムじゃ世界は戦争に向かうよ」って言ってましたもんね。「お前もっと世界を引き止めろ」って。それにニュース見てても楽しいのばかりじゃないなあっていうか、子供の誘拐とか日本人が拉致されたとか多いじゃないですか? そのショックを中和させるには、こんぐらいの音と、こんぐらいの言葉と、こんぐらいの熱量がないとやってけねーぜみたいなとこですよ。

村井 根本はホントに“君と僕”だけですよね。ニュースで流れてることとかには心の底から可哀想だなあって思えないし、それよりも俺のチンポの長さが12センチなかった(注・ここだけの話、実話です)っていうことの方が「えーっ!!」ってなるわけですよ。やっぱり僕らの音楽っていうのは自分の中から自然に出てきたものをやりたいわけで。

峯田 うん。それに“君と僕”さえ歌ってれば世界と繋がる気がするんすよね。物凄いスケールの小さいことですけど、それを大事に歌ってたら繋がる気がするんすよ。何もね「世界を平和にしましょう」なんて言う気はさらっさらないですよ、自分では出来ないと思ってっから。ただ、世界の平和を想うよりも、隣にいる君のことを「絶対何が何でも俺が幸せにしてあげるからね」って、「俺は幸せになれなくていいからお前だけは幸せになれよ」って気持ちさえあれば、ちょこっとずつでも変わっていく気がするんですよ。このCDも、結局は一人で悶々悶々しててズングリむっくりで何か欲求不満で、ど~していいかわかんねぇみたいな人間がいたとして、そいつがこのアルバム買ってくれて、少しでも「一人でいるってことは決して救いようのないことではないんだよ」っていうか、「孤独を持ってる人は君以外にもいて、むしろやってる俺が孤独なんだよ」っていうことを感じてもらえたら、その人にとってはいいのかなって思いますけどね。その一人が「よっしゃ、CD良かったから今度ライヴ行こう」っつって、それで一人一人が集まってきて、その一人一人の集合体が出来て、その時に何か知んないけどひとつ屋根の下のひとつの音楽で「ワァー!」ってなって……たぶんそれは素晴らしいことなんじゃないかなと思いますけどね。そういうのやっていきたいなあ。
# by akihirock69 | 2005-03-02 09:44 | WORKS
 僕がまだティーンエージャーでアスホールだった頃、こう見えてもイッパシのギター・キッズだったのだけど、その当時個人的にゾッコンだったのがEXTREMEというバンド。特に中心メンバーでありスーパー・ギタリストとして名高いヌーノ・ベッテンコートの虜だったのだ。どれくらい虜だったかというと、彼のシグネチャー・モデルのギターを持ってたくらいに(ちょっと赤面)。ハイスタと出会うまで僕のギターヒーローの座を独占していたわけだけど、ヌーノの超絶テクを何とか習得すべく、部屋でしこしこギター弾いておったのでした。文化祭で披露したりもしたのでした(さらに赤面!)。いやぁ、懐かしい。

 念のためにEXTREMEについて説明しておくと、80~90年代のハードロック・シーンで活躍したフロム・アメリカの4ピース・バンド。“ファンクメタル”と彼らが自称するように、そのサウンドはざっくりと言って跳ねるリズムにハードなギター・サウンドを織り交ぜていくというもの。「More Than Words」というバラッドがアメリカで大ヒットして、ここ日本でもMR.BIGと並んでかなり人気があったと思う。確かヴォーカルのゲイリーがヴァン・ヘイレンのバンドに入っちゃって、それでEXTREMEも終わってしまったんだっけ? 

 さて、そんな彼らが一時的な復活を遂げ、去る1月12日、SHIBUYA-AXにやって来た! いわゆる“メイク・マネー”な来日だとは心のすみっこで思いつつ、ここはひとつお祭りを楽しもうじゃないかとチケット・ゲットして行ってきましたよ。

 会場は会社帰りと思われるスーツ姿の方もたくさんいて、20代後半から30代が大半。アジカンのドラム・潔くんにも会った。凄く好きなんだそうだ(同志よ!)。ライヴは2ndアルバム『Pornograffitti』のオープニング・ナンバー「Decadance Dance」からスタート。しっかりとギターアンプ前に陣取った僕は、ヌーノが現れた瞬間ひっくり返りそうになった。なんせ「神」がそこにいたのだから。やはりギター・ソロとなるといちいち歓声があがり、壮絶なライト・ハンドにはため息がもれる。月並みな言い方だけれど、やっぱカッコ良いっす! セットリストは2ndと3rdの楽曲が中心で「Get the Funk Out」、「It(’s A Monster)」、「Cupid's Dead」、「Warheads」といった代表曲を連発。バンドとしてはミスも連発してたし決してタイトなものではなかったけれど、まあ何と言ってもヌーノ・ベッテンコートである。一人アコギを弾きまくる「Midnight Express」や「He-Man Woman Hater」の早弾きを余裕でこなす姿には本当に感服でした。

 少し余談めくけれど、ハードロックやメタルのバンドって「見せる」ってことに関してとても意識的だ。変にヒネくれずに「これをやればみんな喜ぶだろうな」ってことを惜しげもなく見せてくれる。きっと「SHOW」という語義に忠実なんだろう。
# by akihirock69 | 2005-03-02 09:41 | WORKS
 右肩上がりなんてもんじゃなく、痛快なまでに垂直上昇を続けているアジカンから2ndアルバム『ソルファ』が届けられた。この夏も各地のフェスを転戦し、全くいつの間に作ったんだと驚いてしまうが、これは前作『君繋ファイブエム』に渦巻いていたパワーがより大きな広がりを獲得した快作である。
 本作を聴くとアジカンの新生面を切り開いたひとつの重要なファクターが“リズム”であることがよく分かる。そこで今回は山田貴洋(B&Vo)と伊地知潔(Dr)という二人のリズム隊に新作の背後にあるものをじっくりと語ってもらった。



――とにかく前作は勢いのあった作品で、今回の『ソルファ』はぐっと深みを増した印象を受けました。
伊地知 あの時は「エモ」っていうか、ギターが歪んでて勢いがあってっていうイメージだったんですけど、今回はもっとポップな要素も出して元々のアジカンが戻ってきたなっていうのはありますね。前作は気張った部分もあったと思うし。
山田 『崩壊アンプリファー』から去年までバンドがそういうモードだったんですね。たまに昔のライヴみたりすると闘いに行ってる感じっていうか(笑)。前作も一気に「ガッ!」って吐き出してた部分はありましたね。楽曲自体もそんな感じだったし。今回は肩の力が抜けて、自然と積み上げてきたものが引き出せるようになったというか。デビュー前からやってきたことが全部いい形で出せた作品なんじゃないかな。
伊地知 ゴッチも気持ちよく力を抜いて作ったって言ってるしね。
――ある意味攻撃的なモードのひとつの区切りが前作だった。
山田 そうですね。それから「サイレン」が出来てからいろいろと変わってきて。あの曲の存在が大きいと思います、バンドの中では。あれくらいスケールの大きい曲はやったことがなかったんで。出来たことは自信になりましたね。
伊地知 大きなリズムの曲で作る時間も余裕もあったから、ここに全部入れちゃえっていうイメージがあって。
――「サイレン」にしても「ノーネーム」にしても、これまでと手触りの違う楽曲の作曲クレジットには必ず山田くんの名前があるという。
山田 それは新鮮だったんじゃないかな、後藤くんにとって。今までは僕が曲を持っていってもなかなか彼のアンテナに引っ掛からなくて。「サイレン」はリズム隊である程度作っていったのが良かったのかな。
――リズム隊だけでスタジオに入ることもあるんですか?
伊地知 基礎練習をやってますね。僕は元々ハイスタとか大好きだったので『崩壊~』の時はああいう要素を凄い取り入れたくて、「アジカンをもっと激しくしたい」っていうのを求めてたんですけど、欲求が変わってきて、いろんなジャンルの音楽の良いところを上手く取り入れようと。サンバとかボサノバとかJAZZっぽいリズムとか、16ビートの大きくノレるグルーヴとか、そういうのを勉強したいなと思って。「君という花」では裏打ちのディスコ・ビートみたいなのもやったけど、あの辺でディレクターから下手くそって凄い怒られてですね。
――それで凹んじゃった?
伊地知 はい(笑)。それから山ちゃんと二人で基礎練習をいろいろ始めたんですよ。
山田 その時は良くスタジオに入ってましたね。凄く大事な時期だったと思います。
――じゃあまず個人的な行き詰まりがあったと。
伊地知 行き詰まったんじゃなくて、何も知らなかったんですね。ホントに周りの音が聴こえてなかった。やっとやらなきゃいけないことが見えてきて、だから今回のアルバム製作の時は凄い聴こえるんですよね、誰が何やってるのかが。前までの「激しくしよう」ってのもアクセントにはなってたんだけど、良い面も悪い面もあって。それが分かるようになって今回は凄くまとまってると自分では思ってます。
――バランスが非常に良くなってますよね。
伊地知 そうですね。
山田 今回は安定したビートを刻むっていう方向に向かってて。最初はいっぱいいっぱいだったけど(笑)。
伊地知 うん。今もいろんなリズムを試してて、それをウチのバンドは採用してくれるんですよね。自分を出すって意味では良いバンドだと思いますね。
――やりがいがありますよね。
伊地知 そうですね。楽しいです。
――じゃあ潔くんが成長していく中で特に山田くんの存在というのは大きかったんだ。
伊地知 うん、山ちゃんから教わったことも多くて。山ちゃんがギター陣とリズム隊の中間にいて凄く大変な立場なんだってこともわかったし。あとやっぱりハイスタの恒岡さんの存在は大きいですね。最近はキュビ(CUBISMO GRAFICO FIVE)でやってらっしゃるのも聴かせてもらって、なんて良いグルーヴなんだろうと。凄くインスパイアされてますね。
# by akihirock69 | 2005-02-21 01:23 | WORKS
ヘヴィロックの未来を照らす、GUN DOGの闇

 それは急転直下の出来事だった。気鋭のヘヴィロック・バンド「GUN DOG」が、あのマリリン・マンソン来日公演でオープニング・アクトに抜擢されたのだ。何しろここ日本でもカルト的な支持を得ているモンスター・バンド、マリリン・マンソン。会場であるNKホールは一種異様なムードに包まれていた――暗い色味の口紅にアイ・シャドー、果てはフランス人形のようなコスプレ・ギャル――まるで異世界に迷い込んだ感覚だが、そんな「信者たち」がひしめく中でライヴをするということは、正面切って敵地に乗り込んでいくのと同意である。そこは『REAL MUSIC SOLDIER』を旗印に掲げるGUN DOG、望むところに違いない。だからこそ、この夜のステージは「クーデター」とでも形容すべきとても攻撃的なものだったのだ――。

 もう初っ端からフル・スロットル、アルバム『Humanity』でもオープニングを飾る“Power of the sun”から間断なく楽曲を叩きつける。様子を伺っている傍観者たちを、上下に大きくバウンスする直下型グルーヴで揺さぶる。ダイナミックでありながら底深い闇を抱え込んだ彼らの楽曲は、マリマン信者に通ずるものがあるのだろう。ぼくの前に陣取っていたキッズが、吸い込まれるように前へ駆け出していった。とりわけ印象的だったのが目深かにニットキャップをかぶり、怒号のような叫びと速射砲ライム、そして繊細なファルセットを駆使して巧みに情念の色を伝えるヴォーカル・K。その威容はどこかエミネムのようでもあり、つまり何か巨大なものを相手に闘っていた。

 さすがにエンターテインメントの限りを尽くしたマリリン・マンソンのステージは圧巻という他なかったが、癒えることのない生傷のような衝撃を会場に残したGUN DOG。世界レベルのバンドと共演することで、彼らの高い音楽性とプレイヤビリティが顕在化したステージだった。
# by akihirock69 | 2005-02-04 00:20 | WORKS
 グレイプバインがひたちなかの大地に快い風を吹かせた午後、それはこれから次第に悪化していく天候の狭間ともいえる時間帯で、カンカンに太陽が照りつけるでもなく、とても緩やかな時が流れていた。既にステージ前からかなり後方までが黒山の人だかりで、それはそのままバンドへの期待感の表象だ。より厳密にいえば、この人たちなら必ず最高のショウで楽しませてくれるという、絶大なる信頼に他ならない。今年デヴュー10周年を迎えるウルフルズが、がむしゃらに突っ走ってもぎ取った「勲章」である。ライヴ前のバック・ステージでは、彼らはこんな話を聞かせてくれた。

●「10年」という重みのある言葉から、どんな感慨を抱かれますか?
トータス松本「10年は、でも早いね。あっという間やね。20年たったらスゴいなって思うかもしれへんけどね。10年ぐらいやったら、あぁ10年たったなぁ、ぐらい、感じとしては。まぁ面白かったね」
●振り返ってそう思えるっていうのは、ほんとに幸せなことですよね。
トータス松本「そうそう」
ウルフル・ケイスケ「山あり谷ありやけどね。ジェットコースター・バンドと呼ばれてるから(笑)。登っては下り、登っては下り」
●(笑)例えばの話、20周年の頃にはどんなバンドになってると思いますか?
トータス松本「20周年やと、もうちょっと、いや、だいぶ一目置かれたいねー」
一同「(笑)」
トータス松本「そういう風になってりゃ嬉しいな。うーん。今日はどうやろね、盛り上がるかね? アカンかったらもう2曲目くらいであやまって帰るから(笑)。ごめんなさいって。まぁ、遠路はるばる来たんで、やれるだけのことをやりますよ。変に力入れてもカラ回ると恥ずかしいしね。だから謙虚な態度で」
ウルフル・ケイスケ「まだ10年やし(笑)、いつも通りの自分らを見てもらう感じで。ぼくはね、意気込みがないっていうのが意気込みなんですよ。だから肩の力抜いてね、楽しめたらいいなぁて思てます」
サンコンJr.「暑さに負けないようにがんばります!」

 豊かに哄笑し合う3人からは、レッド・ホット・チリ・ペッパーズにも負けない、たくましい絆が感じられた。

 さてさてキック・オフは軽妙に、“ツーツーウラウラ”でセイ・ハロー。底抜けにノー天気なリズムにのって、巻き起こる砂煙も何のその、急激に会場のボルテージは高まっていく。そして2曲目にして早々と最初のピークがやってくるのである。印象的なケーヤンのワウ・ギターで始まる、あの無敵のディスコ・ファンク・チューン、“ガッツだぜ!!”が炸裂。大喜びのオーディエンス、ドゥ・ザ・狂喜大乱舞! 数年前、ウルフルズを一気にオーヴァー・グラウンドへと押し上げた超強力ナンバーのしなやかなグルーヴが、上へ下へ大地を揺らす。これはえらいこっちゃ!である。波打ちまくるハイ・テンションのまま、“SUN SUN SUN ‘95”へとなだれ込み、ぼくらはどっぷりとウルフル宇宙へといざなわれていった―――。

 ほんとうに雷か何かが落ちたんだと思った。前曲から少しの間をおいて、「イェーイ!」とトータスが雄叫んだ瞬間、景色は衝撃的に一変したのだ。地平の果てまで笑顔がつらなり、同時に数え切れないバンザイが天を突いた。もうお分かりだろう。ウルフルズ不朽の名作“バンザイ~好きでよかった~”が、大空に響き渡ったのである。日本シング・アロング協会の調べによれば、この時の合唱比率は3日間でも最大級のもので、ほんと、みんな歌ってた。みんな笑ってた。笑顔を突き抜けて、ベソもかいた。これこそ、スゲェスゲェ幸せな気分!
 
 ショウに浸りながら、彼らがこんなにもみんなに受け入れられる理由をぼんやりと考えていた。一概には言えないが、ひとつには彼らが「みっともない」からだと思う。どつかれそうな言い方だけど、つまり、人生とはみっともないことだらけだということだ。さまざまな事柄において、ぼくらはどん臭く躓いてばかりだ。さまざまな恋愛における失恋、それから燃え上がった盲目的な恋も、やはりカッコわるくて、ぶざまなものだ。誰もが大っぴらにしたくないそんなみっともなさの数々を、ウルフルズはとことん曝け出し、自嘲を交えながらも、とことんタフに楽しんできた。その独自のコミカルさは、生きるということの根源的なみっともなさと結び付いているがゆえに、とんでもなく痛快なものとしてぼくらの身に迫るのだ。トータスは叫ぶ、「アホになれ!」と。それは要するに、虚栄と驕慢に満ちた世界からの「解放宣言」である。カッコつけんな。エラそぶるな。ありのままの自分で、バカ正直に行こうぜ。これがウルフルズの掲げるスローガン、アホ・アホ・パワーの根幹にあるメッセージだとぼくは思っている。
 
 ラスト・ナンバー“いい女”では、歌い終わったトータスがステージを去ると、ケーヤンが「もう一度、トータス松本に会いたいかぁ!」と叫ぶ。「オレらに力を貸してくれぇ!!」。湧き上がるトータス・コール。そして帰ってきたトータスは1フレーズを熱唱し、再び去ってゆく。そしてケーヤンが叫ぶ、「もう一度、トータス松本に会いたいかぁ!!」。・・・・・・これをこの人たちは3回も繰り返してしまうのである。正真正銘のアホである。それを大喜びで迎えるぼくらも、負けず劣らずアホであった。他方、遂にはステージに倒れこみ、まるで全霊をしぼり出すように独りブルースハープを鳴らすトータスの姿には、体中に戦慄が走った。10年という戦いの遍歴がもたらした、円熟の結晶。ほんとうに非の打ち所のない、究極のエンターテインメント・ショーだった。ウルフルズに多謝!!
# by akihirock69 | 2005-02-04 00:18 | WORKS